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おとめのエッセイ

女医の力~その5 糊のきいた白衣の下に

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天使の卵 エンジェルス・エッグ (集英社文庫)/集英社
「それで」
 と僕は言った。声がかすれた。
「それで、精神科医になったんですか」
 彼女はうっすらと笑った。
「そうね。つきつめれば、そういうことなんでしょうね。なんだかお手軽な解決策に聞こえるかもしれないけれど、そうでもしないと私、とてもやっていけなかったのよ。よけいなことを考えないですむように、がむしゃらに勉強して、結局ひとより一年よけいにかかったけど、何とか国家試験にも受かったわ。気がついてみたら、もうすぐ二十八。不器用なのよ、私。一度にひとつのことしかできないの。そういう意味では、五堂と私は似たもの同士だったのかもしれないわね」


 僕が運命的な出会いをしてしまった五堂春妃先生は、僕に出会うその前につらい運命的な恋を経験してしまった人だった。

「私たちが結婚したのは、あのひとが二十三で、私が十八のときだったわ。高三のときに家庭教師を頼んでいたのが、仲のよかった友達のお兄さんだったんだけれど、そのひとが芸大の三年生でね。その子と私を学園祭に連れて行ってくれて……。五堂とは、そこではじめて出会ったの」

 彼女の目に、昔を懐かしむ輝きが走るのを、僕は黙って見つめていた。


 

 僕が先生に自分の思いを告白した後の先生の言葉だ。

 偶然は重なるもので、僕がそれまで付き合っていた高校の同級生の夏姫は先生の妹だった。妹から最近僕の態度が変だと相談された先生は二人の仲がうまくいっているのかどうかを聞く役目だった。他に好きなひとがいる、それはあなたですと告白した僕。先生は創作に没頭し日常生活から次第に遊離していった早熟な天才肌の五堂さんと自分の過去の話をする。


「たまに我に返ると、私に訊いたわ。『おい、春妃、オレは狂っているように見えるか』って。『見えないわよ』って私言ったわ。本当はほんの少し疑い始めてたところだったからぎくりとしたんだけど、とにかくそう答えたのよ。ほかになんて言える?」



 僕も先生もしばらく沈黙します。

『でも俺は狂っているんだ。そうは見えなくても、狂っているんだ。もし俺が狂ってないとすれば、世界が狂っているんだ』



 それから一月程して五堂さんは急に思いついたように命を絶ってしまいます。
 先生は後を追う気力もなく、お腹の中の子供も流産してしまいました。



「本当は何とかして私に助けて欲しかったんじゃないか、私がそれに気がつかなかったせいで、あの人はとうとう絶望して死んじゃったんじゃないかって、そう思うともう、つらいなんてものじゃなかった。心臓が凍りついてしまいそうだったわ」


 先生の「甘えを寄せつけないピリッとした糊のきいた白衣」の下に電車の中ではじめて会った時にみた「あの傷つきやすそうな、ガラス細工の人形のようなもろさ」を僕がもう一度みた瞬間でした。



 続く…
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~ Comment ~

1. 傷を持つ人 

傷を持つ人は独特の雰囲気を持っていますよね。誰でもあるんだけどその時の向き合い方がそのあとのその人の人となりを形成していくんだと思う。

普段は仮面を被ってるのに、時々その奥のすごい優しさと孤独をちらちら見せられちゃうともうイチコロだわ

2. Re:傷を持つ人 

>タロットカウンセラー 喜与実さん

こんにちは
コメントありがとうございます(^-^)
雰囲気って本当に不思議ですよね~。
ちゃんと周りと調和してるのに、時々不快じゃない乱調がある感じ?

迎合じゃない調和だから時々乱れた感じがかえっていいんですかね…。

奥深いですね(ノ∀`)

3. 美は乱調にあり・・・・ 

さっき、久しぶりにハムレットを読んで、「言っていることはいささか脈絡は欠いている、しかし狂ってはいない」という台詞のことを考えていました。

周囲があまりに異常な状態で、一人正気を保とうとする時、言動に何かおかしな感じはしても、
その奇妙さがかえって、全体の状況をあらわに映し出している光景とでも、言うべきでしょうか・・・。

ニーチェはある意味そのような人間だったとは思いますが、彼のようなパワーのある乱調が現代の日本に現われたらどうなるんでしょう。

「物語は、あらゆる瞬間に、不必要な、意想外の
着想によって、中断されていなければならぬ事」
というのは小林秀雄の言葉だそうです。

私は小林秀雄も苦手としていますが(笑)、物語の美しさの一つに、一種の破調や乱調があるのは確かだと思います。

ただしそのような物語を読む読者は美を感じたとしても、作り出している作者は幸福とは言えない場合がほとんどなのでは?と思います。それも作家の幸福と言ってしまえばそれまでですけど。

4. 1人の女性を、唯純粋に 

書物には
純粋さにつきモノの悲し過ぎる結末

男女、姉妹、親子の愛情が全て純粋に描かれた作品のよぅに思えます


愛の形は
結末を恐れない
純粋さの追求を
常に自分に問い掛けていたいものですねッ


ガキの頃のよ~に

5. Re:美は乱調にあり・・・・ 


>牛山馬男さん

ハムレットのその苦悩は言葉は通じるけど話が通じないというジレンマですよね。

精神科医のもとにやってくる患者にはこういう症状の人は多いと思います。

その意味でニーチェの言葉ほどの普遍性はなくとも、幾分かニーチェ的な真実は、しばしば狂人の口から、あるいはシェイクスピア劇の道化の口から発せられるのでしょう。

牛山さんのおっしゃるように、それは美しくはあっても決して幸福ではないかもしれませんね。

じゃあ、読者は、精神科医はその「美」にどう向き合えるでしょうか。

その辺りを次回書いてみようかと、このコメント拝読して思いました。

6. Re:1人の女性を、唯純粋に 

>海渡♪#さん

おはようございます。
おお!(o^—^)ノ海渡♪#さんが感じたものはおそらくこの小説の中にあると思います。

次回もよろしくお願いします!

7. うーん 

元の小説自体を読んでないもんだから,まああれなんですが。

クライアントに告白されて核心的な内面,自身の外傷体験を語り出す精神科医・・・・距離感が厳しいかも・・・・

うーん。どあほう鈍感男をひたすら演じ続ける私たお対極の姿だわ。

8. Re:うーん 

>弁護士 下中晃治さん

こんばんわ。
次の記事にいただいたコメントとワンセットで読ませていただいた方がいいんですよね。

でも、おっしゃることは非常によく分かりますし、大切なことだと私も考えます。

後で、ちょっと間違った感じの距離感持っちゃってるウルトラバカ医者が私の記事に登場するんですが、距離感を取ることの難しさっていう文脈で少しその医者をフォローする部分も含む記事を書こうと思っているのです。

(o^—^)ノまたそれも参照いただければ幸い
です。
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