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おとめのエッセイ

女医の力~その6 感情移入は真の共感などではない

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 彼女の目に、昔を懐かしむ輝きが走るのを、僕は黙って見つめていた。




 この時の僕の感情の揺れは「感情移入」ではない。かと言って自分の知らない過去への共感できない「いらだち」でもない。

 もっと静かな深い部分での魂の理解のようなものだと思う。


【感情移入とは】 - Weblio辞書 http://bit.ly/PjZJn7
(1)他人の言葉や表情をもとに、その感情や態度を追体験すること。共感。
(2)〔哲〕〔英 empathy; (ドイツ) Einfühlung〕リップスの美学などで、自然や芸術作品などの対象に自分の感情を投射し一体化すること。



 共通の思い出があった場合ここでいう「追体験」は簡単だ。例えば同窓会で盛り上がるなどがその例だろう。

 小説を読んだり、ドラマを観たりする時に、主人公の考え方に近かったり、好みが似ていたりすると自分がその主人公になったような気になれて、いわゆる「読みやすい」状態が生まれるのもこの「自分の感情を投射し一体化する」感情移入の作用に他ならない。

 Amazonのブックレビューなどでも「共感できた!」「読みやすい!」というのはマークが増える高評価ポイントになっています。

 でもこのとき「共感」という言葉は、単に自分に近いというだけの意味になってしまっているかもしれない。別の言葉でいえば、自分の価値観、人生観に照らし合わせて、「賛成の一票」を入れられるかどうかにおとしめられている。つまりマークは単なる賛成票になってしまっているのだ。

 ツイッターなどは、自分の意見に合う人ばっかりフォローして、気に入らないひとはフォロー解除することの繰り返しに陥りがちだから、フォロアー、フォローが増えれば増える程、自分の意見や感情をを肯定的に補強してくれる、うっかりすると会社でいえば自分の周りにイエスマンばかり集めたお山の大将状態になってしまう。

 これはもしかすると他者を拒否し、自分の「感情移入」しやすい対象をせっせとコレクションしているに過ぎないと言える事態なのかもしれない。




 この感情移入型の共感の限界『天使の卵』の場合、以下のような切ない戸惑いとなってしまいます。

「たまに我に返ると、私に訊いたわ。『おい、春妃、オレは狂っているように見えるか』って。『見えないわよ』って私言ったわ。本当はほんの少し疑い始めてたところだったからぎくりとしたんだけど、とにかくそう答えたのよ。ほかになんて言える?」


 例えば極端な話、私たちは小説の中で殺人犯にすら「共感」することがある。でもその時の心理のメカニズムは「わかるよ~、そういえば俺もむかし人を殺したことあったし」とかにはならない(爆)。

 人殺しは極端だから別の例でもいいんですが(^-^)、じゃあ…奴隷となって売られちゃういたいけな少女の話。涙することだってありうる。でもその時「自分も小さい時アフリカから売られてきたからこの女の子のことはよく分かる」とかじゃない。




 じゃあ、狂気はどうか。春妃さんは僕に「ほかになんて言える?」と言います。開き直っているのではありません。それどころか、おそらく先生はその問いの答えをずっとずっとこれ以上ないほど真摯に探し続けて生きてきたんだと、読者には自然に思えます。

 もし感情移入型の理解が可能ならば「あ~分かる分かる。あたしも気が狂ってたし今でもまだ十分おかしいし~」という言い方ができたかもしれません。

 ここに感情移入型の「理解」の限界があっさりと、致命的に露呈してしまいます。




 「感情移入」できなかったらどうするか。彼氏を精神病院にぶち込んで、正常な自分でも共感できる世界向けに矯正を施してから「ツラかったね」とあらためて共感してみせるか、あるいは狂人との間に線を引き、ツイッターをアンフォローするように自分の目の前から消す(別れる)という手もあるでしょう。



『でも俺は狂っているんだ。そうは見えなくても、狂っているんだ。もし俺が狂ってないとすれば、世界が狂っているんだ』



 あなたが狂ってるなら精神病院にGO!世界が狂っていると言い張るならさようなら。

 とってもわかりやすいです。

 それが悪いとは言いませんが、少なくとも春妃さんにはその両方ともできなかった。





「本当は何とかして<私>に助けて欲しかったんじゃないか、<私>がそれに気がつかなかったせいで、あの人はとうとう絶望して死んじゃったんじゃないかって、そう思うともう、つらいなんてものじゃなかった。心臓が凍りついてしまいそうだったわ」

 僕に対する先生の息遣いはおそらくこうしたものだっただろう。




 彼女の目に、昔を懐かしむ輝きが走るのを、僕は黙って見つめていた。

 これは共通の思い出を一生懸命探して、小さなエピソードを針小棒大にして酒の肴に馬鹿騒ぎする同窓会の懐かしさではない。





 あなたはこんな<私>を助けられるの?

 人を助けるということに根源的に失敗し、根本的に懐疑的でいながら、なおそんな人との関わり合い方の可能性を捨てきれずに精神科医にまでなって、でもまだ答えを求め続けている未熟なこの私に、あなたはひとりの<私>に人が誰かを助けるということの意味を気づかせてくれるというの?







 春妃先生の僕への言葉は、「感情移入」をあらかじめ拒否していてそれでもなお、あなたはこんな話を聞きたいの?聞いたとしてもまだあたしのことを好きだと言えるの?あたしがあなたに求めているものがあるとしたら、それは感情移入による同情ややすっぽい「分かるよ」じゃないのよ、それでもあたしのことを知りたいの?と問いかけてくる恐ろしい程真剣でせつない裸の魂の声なのだ。





続く…
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~ Comment ~

1. おはようございます 

いつも ありがとうございます
こんな頭のよい方に読んでいただくに足るブログが書けてるのだろうか と励みになってます



> あなたはこんな<私>を助けられるの?

 人を助けるということに根源的に失敗し、根本的に懐疑的でいながら、なおそんな人との関わり合い方の可能性を捨てきれずに精神科医にまでなって、でもまだ答えを求め続けている未熟なこの私に、あなたはひとりの<私>に人が誰かを助けるという意味を気づかせてくれるというの?



の くだりに涙が出ました
助けを必要としているのは <私> なんだよなあ・・・ みたいな思いがわいて

いつも勉強させていただいてます

ありがとうございます!

2. なるほど・・・ 

こんにちは^^

人に相談したり話を聞いてもらったりする時、「分かって欲しい」という気持ちよりも、「分かろうとする気持ちを持ってもらえるか」図っている自分がいるな

この本読んだ時、胸が痛くて割り切れないような気持ちになったのが、今は分かる気がする

ゆっきーさんの解釈で、私救われている気がする

3. Re:おはようございます 

>テペスさん

おはようございます。
コメントありがとうございます。

先生は救いを求めてる。
でも、その思いは精神科医失格の甘えなんかとは、あらゆる意味で無縁だと思うんです。

「僕」はこの時、先生の亡き夫と同じ東京芸術大学を目指すまだ19歳の予備校生です。

ハッピーエンドじゃないけど何とも言えない救いのある小説です。たぶんそれは、春妃先生の救いを求めた僕が、確かに人に救いを与えられる若者だったからだと思います。

4. Re:なるほど・・・ 

>cocoonsさん

この本は胸が痛くなりますよね…。

こういう触れそうで触れられないような微妙な心の揺らぎは、村山由佳さんの人物造形の核みたいなものなのかなと思いながら、何度も読み返してる私の愛読書です。
(´ー`)

5. 助けてくれるということの意味・・・ 

Y(>_<、)Yこんにちは!
なんとも切ない部分でありますね!

助ける・・・心を癒す、文字通り救う、真に共感する・・・・何と言っていいか分かりませんが、「助けることの意味」という言葉が残ります。
例えば悲しみや苦しみの只中にいたら、答えを求めるというより、よりいっそうの悲しみや苦しみで癒されるってことありませんか?
音楽でも、そんなのありますけど・・・

苦しみにはいっそうの苦しみの共感、悲しみにはいっそうの哀しみの共感が、やっと助けの入り口かなと思います。

それを相手に表現するのは、言葉でもないしただ理解するだけ・・・理解できないとしたら、それは助けの入り口にも入れないので、後日別な意味で苦しむことになりそう・・・。

偉大な光太郎の前で智恵子が狂っていきましたがそのときの光太郎は智恵子を理解できなかったと思う。ロダンも・・・

女医さんの苦しみが「恐ろしいほど真剣で切ない裸の・・・」という表現でよくわかりました。

6. Re:助けてくれるということの意味・・・ 


>スカーレットさん

そうですよね~。確かに悲しい時悲しい音楽聴きますよね。
何でなんですかね…。
やっぱり思いっきり泣いて悲しさの意味をはっきりつかみたいからなんでしょうか。分からないです。

光太郎もロダンも辛かった。
智恵子とカミーユと同じくらい。

7. 無題 

こんばんは。
読者側にとってはギクリッとさせられるテーマですね。

>あなたが狂ってるなら精神病院にGO!世界が狂っていると言い張るならさようなら。

が出来てしまえば気持ち的に楽だったんでしょうけど
それが出来ないほどその人を愛していたんでしょう。

その傷を今でも引きずっている<私>は僕に本当の救いを求めてる。傷を舐め合うような同情じゃなく。

8. Re:無題 

>メランコリーみかげさん

こんばんわ(^○^)

なかなかすごい状況設定です。
旦那様が命を絶ってしまったのが、春妃先生がちょうど「僕」と同じくらいの年。

何か大きな繰り返しみたい…。

9. こんばんは 

そうですね。真の共感・・・・・それはもはや自己というシステムが壊れた状態になって、初めて起こるような交流かもしれませんね。

津波で肉親を目の前で流された人々のあいだに生じる感情は、「共感」というより、「共苦」という言葉がふさわしいかもしれません。

日本のサッカーが勝って、みんなが喜んで大騒ぎするのは、「共喜」と呼ぶとなんかおかしい感じがするのは、共感というものが、存在そのもの
の悲しみや苦しみに近い部分に位置していることを意味しているのかもしれません。

「共喜」という狂気を強いられるのはたまったものではありませんね(笑)

28歳で鬱病で自殺したイギリスの女性の劇作家、サラ・ケインの「サイコシス4時48分」をお勧めします。京都造形芸術大学で出している、「舞台芸術の8号」の最後に載っています。大きな本屋さんなら置いているかもしてません。

根が単純なゆっきーさんですが、サラ・ケインの狂気は良くわかりそうに思います。

10. Re:こんばんは 

>牛山馬男さん

共喜というのは自己システムは壊れてないでしょう。酩酊してるに過ぎないのでは?
刑法でいう「原因において自由な行為」だと思います。
まあ、サッカーに限らずスポーツ一般の共喜とはそういうものかと。

11. 共感的理解 

このテーマ、あたしも発表したことあります。

その時に感情移入とか同情とどう違うのかを説明しました。

感情移入の主役は自分自身。役者は一人ですよね。
共感は関係性がある。
役者は二人。相手がいて初めて共感が成立する。

占いをしていても感情移入なんかしちゃったらぶれちゃうし、下手したらお客様の髪の毛つかんでブルンブルンまわすくらいの勢いで相手をふりまわしてしまいそう・・・・

逆もしかりだしね(笑)

だから糊のきいた白衣が必要なんだろうな^^

12. Re:共感的理解 

>タロットカウンセラー 喜与実さん

おはようございます。
やっぱり占い師の先生は意識されてるんですね!

>>役者は二人。相手がいて初めて共感が成立する。

ズバッとありがとうございます!
こういう事が書きたかったのであります。
(o'ー'o)ノ

授業する時の教壇の高さ、平社員よりちょっと大きい上司の机、みんな白衣の知恵なのでしょうかね…。

13. 無題 

同じような問をされた。

「この世界は狂ってるから、君もちょっと狂ったくらいでちょうどいい」

そう答えた。共感でも何でもないただの感想www


共感なんて実際に同じことがない限りできない。同情はできる。同情してなにかしら手助けもできる。
理解もできる。紐解いてその人を知ることもできる。それでいいと思うわけです。


共感って言葉にはなんかしら座りの悪いむず痒さがある。テレビの涙を誘う番組に素直に感動できる人々を見るときの違和感と同種のものだ。





14. Re:無題 

>マトゥシュカさん

その言葉は恋人に言ったんですよね。
恋人は愛情と責任をパーフェクト両立しうる稀有な特権的な立場にいるから、その言葉を言われた方は救いを感じられるでしょうね。
その後その言葉に救いを感じた女性と生きていくのはなかなかすごいことだろうなと思いますが…。

共感は不意打ち以外全部いやらしい偽物だと思うな。
あ、そういうことだったの?っていう時の、気がつかなくてホントにゴメンねっていう罪の感情が、失った時間の遅れへの哀惜が伴わない共感なんて暑苦しいだけな気がする。

あ、ごめ~ん
コメントのお礼のつもりがつい語ってしまいました(笑)。

15. それよりも 

感情ってなんだろう
一見理性と切り分けられるような気もするけど
感情から自由な人間などいるのだろうか?

仮に感情が人間を束縛するものだとしたら
感情それ自体感情移入であって
あとは他者に向かうか自己に向かうかの違いであって

自己身向かえば狂気とか反社会的、他者に向かえば共感とか反感とかになるのかな?

だから自己完結した感情移入はあると思うけど。

あと感情を言葉に変換した時点での
意図を(意識的、無意識的に関わらず)見極めたいよ。

16. Re:それよりも 

>深川歌仙さん

狂気とか反社会性という文脈で理性を捉える場合は、理性の反対語は「感情」ではなく「非理性」が有効でしょう。

西欧形而上学を築き上げ、それを守ろうとする者たちは狂気や反社会性を封じ込めたわけです。例えばフーコーの労作『狂気の歴史』『監獄の誕生』などがそこをえぐり出してますね。

ちなみにニーチェは理性、真理とは何かではなくて、理性や真理を<語る者は誰か>、誰のための理性か、誰のための真理かという視点を哲学しに導入し、西欧形而上学を破壊しました。

感情、パトスはむしろそうした精神的圧政に抗う力として現代哲学では評価されてると言っていいかと思います。

17. うん,素敵 

大変失礼しました。この前の記事で,ちょいとふざけてケーハク過ぎるコメントを入れたこと反省しきりです。

「私ーあなた」関係を考えます。
投げ出された人間の本質的な孤独。
その孤独を噛みしめつつ,関わりのなかで生きるということ。

そもそも論ですが,


「私」は,他者を,救いうるのか?

人は神ならぬ凡夫です。
投げ出された凡夫が生きる世界。
その中で,至らぬ人,本質的孤独と無明の中でいきる人が,同様の他者を「助ける」ということ。

どういうレベルで「助ける」?

やっぱ,私,ネクラなんだわ~。
ではヽ( ̄▽ ̄)ノ

18. Re:うん,素敵 

>弁護士 下中晃治さん

ちょうどそのことを書きたいなと思っていました。
いつも拙い拙文を丁寧に読んでくださりありがとうございます。
頑張って下中先生の?の答えに近づいて行きたいです!

19. 無題 

えっと大したことでもないのですが。
「下中先生」とお呼びいただいているので。
それは,まあ,社会通念というものの中でも無難な選択なのだろうと思うのです。

私は,あなたを,「あなた」と呼びます。
http://ameblo.jp/shimonaka-law/entry-11309481119.html

うひゃ~,はずかしい自分の記事の宣伝かましちゃった。
掟破り?
でも,ほんの少しだけ,テーマとかする部分もあろうかと思いまして。

そういうわけで,私はあなたを「あなた」とお呼びしたく思うのでした(笑)。

20. Re:無題 

>弁護士 下中晃治さん

「しもちゃん」や「ミステリアスしもちゃん」と発してみたいという誘惑にも駆られますが(笑)、私は先生と呼ばれる立場の方に「先生」と呼びかけることが実は好きなのです(^^)。

何ていうのでしょうか・・・。
その「先生」からふとした拍子にポロッとこぼれ落ちる、先生らしくないところを発見するのが楽しいのかもしれません。

その時先生との間に時もしかしたら出てくる、あ、「○○先生、いま先生らしくなかったですね~、だめですねえ」みたいな(^^)のを楽しみにしてるのかも。

といことで、私のことは「あなた」で結構でございます。
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